ここ十数年の間に、私たちの暮らしはスマートフォンの普及などにより大きく変化しました。それに大きく貢献しているのはMEMS(Micro Electro Mechanical Systems、微小電気機械システム)技術による小型センサです。さらに今後は、小型センサによって世の中のあらゆる「モノ」の状態を把握し、インターネットにつなぐIoT(Internet of things)技術を実現することが求められています。この実現により、ビッグデータ、AI技術との相乗効果で、我々人類の暮らしをより豊かにするだけでなく、限りある資源の持続可能性を示し、食料問題、医療問題をも解決するものとして期待されています。この期待されている小型センサですが、スマートフォン以外に普及がなかなか進んでいません。その原因の一つが電源の問題です。この電源には、電池のように充電や交換を必要とせず、また天候や昼夜を問わずに電力を供給することが求められています。
そこで私たちは、これまでは小さすぎて発電が難しかった身の回りの環境振動に注目し、独自のMEMS固体イオン・エレクトレット技術を構築することで、小型センサを駆動できるだけの電力を作り出すことに成功しました。本研究では、まず従来はっきりしていなかった実際の振動発電デバイスの設計指針を明らかにしました。それに基づいて高密度な固体イオン・エレクトレット形成技術構築と、機械的損失を極限まで低減する真空パッケージ技術構築により、ほぼ理論限界である92%の電力を回収することができました。今後は、これを誰でも簡単に使える製品として実用化することで、IoT社会への貢献を目指していく所存です。